人と比べてしまった日の茶屋

よりそいノート

「小春」

「なあに、小雪」

「なんでさ」

「うん」

「あの人は、あんなにできるんだろうね」

小春は少しだけ首をかしげました。

「誰かと比べちゃった日?」

小雪はうつむいて、こくんとうなずきました。

「同じくらいのはずなのに、
 気づいたら、どんどん差がついてて」

「うん」

「がんばってるつもりなのに、
 全然追いつけない気がして」

小春は静かにお茶をいれました。

湯気が、ゆっくりとのぼっていきます。

「はい」

「……ありがとう」

小雪はカップを持ちながら、小さく言いました。

「比べても、意味ないってわかってるのにね」

「うん」

「でも、どうしても考えちゃう」

小春は少しだけ考えてから言いました。

「小雪は、小雪の道を歩いてるからじゃないかな」

「……道?」

「うん」

「となりの道を見たら、
 速そうに見えることもあるよ」

小雪は静かに聞いています。

「でもね」

小春はやわらかく続けました。

「歩いてる道が違えば、
 見える景色も違うんだよ」

小雪は少しだけ顔を上げました。

「景色……」

「うん」

「小雪の道には、小雪にしか見えないものがあるよ」

しばらく、静かな時間が流れました。

小雪はお茶をひとくち飲みます。

「……そっか」

小春は小さくうなずきました。

「比べちゃう日があってもいいよ」

「うん」

「でも、そのたびに思い出せばいい」

「なにを?」

小春は少しだけ笑いました。

「小雪は、小雪の道を歩いてるってこと」

小雪はふっと力を抜きました。

「……ちょっと、楽になったかも」

「よかった」

小春はポットを持ち上げて言いました。

「おかわり、いる?」

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