少しだけ、前を向けた日の茶屋

よりそいノート

「小春」

「なあに、小雪」

「今日ね」

「うん」

「ちょっとだけ、前を向けた気がする」

小春はやさしく微笑みました。

「そっか」

「うん」

小雪は少し照れたように続けます。

「昨日はあんなに落ち込んでたのにね」

「うん」

「なんでだろう」

小春はゆっくりとお茶をいれながら言いました。

「少し休めたからかもしれないね」

湯気が、ふわりと立ち上ります。

「……そっか」

小雪はカップを見つめました。

「がんばったからじゃなくて、
 休んだから、なのかな」

小春は小さくうなずきます。

「そういう日もあるよ」

小雪は少し考えてから、言いました。

「なんかね」

「うん」

「全部じゃないけど」

「うん」

「ほんのちょっとだけ、
 大丈夫な気がする」

小春はやわらかく笑いました。

「それで十分だよ」

小雪は、ほっとしたように息をつきます。

「そっか」

「うん」

「“ちょっとだけ”でいいんだね」

「うん」

「いきなり全部じゃなくていいよ」

小雪はお茶をひとくち飲みました。

「……あったかい」

「でしょ?」

小春はポットに手をかけながら言いました。

「今日は、いい日だった?」

小雪は少しだけ考えて、答えます。

「うん」

「いい日ってほどじゃないけど」

「うん」

「でも、昨日よりは、いい日」

小春はうなずきました。

「それでいいよ」

小雪は小さく笑いました。

「また来てもいい?」

「もちろん」

小春はやさしく言いました。

「いつでも、お茶は出るよ」

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