ちゃんとしなきゃ、に疲れた日の茶屋

よりそいノート

静かな夜。
湯気の立つお茶を前に、小春がぽつりとつぶやいた。

「今日さ、別に怒られたわけでもないのに…なんかすごく疲れた」

「うん、そういう日あるよね」

「ちゃんとやらなきゃって思ってただけなのに…なんでこんなにしんどいんだろ」

小春は少しだけ考えて、ゆっくり答えた。

「“ちゃんとしなきゃ”って、思ってる時点で、もう頑張ってるからじゃないかな」

「え…?」

「誰かに言われたわけじゃなくてもさ、自分の中で“こうあるべき”って決めてるでしょ」

「…あるかも。“ちゃんとしてる人”でいたいなって」

「それってね、見えないノルマみたいなものなんだよ」

小雪は湯のみを見つめたまま、少し黙る。

「ノルマかぁ…」

「うん。本当は誰も求めてないのに、自分で自分に課してるやつ」

「それ、ずっと背負ってたら…そりゃ疲れるね」

小春は小さくうなずいた。

「しかもね、“ちゃんと”って終わりがないから」

「たしかに…どこまでやればいいのか分かんない」

「だからずっと走り続けちゃうんだよ」

少しの沈黙。
外の風の音が、やわらかく響く。

「じゃあさ…どうしたらいいの?」

「たまにでいいから、“ちゃんとしなくていい日”を作ること」

「そんなのでいいの?」

「いいんだよ。ちゃんとしないって、サボりじゃなくて“休憩”だから」

小雪はふっと力を抜いて笑った。

「なんか…ちょっと楽になったかも」

「よかった」

「今日はもう、“そこそこ”でいいや」

「それくらいがちょうどいいよ」

湯気はゆっくりと空に溶けていく。

“ちゃんとしなきゃ”と頑張る日もあっていい。
でも、ときどきは手を抜いてもいい。

あなたが思っているより、
もう十分、ちゃんとしているから。

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