今日も、思っていたようにはできなかったなあ……
そんなふうに感じながら
夜を迎える日があります
やるつもりだったことも
結局そのままになって
気づけば、時間だけが過ぎていく
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「……また、できなかった」
小雪はベッドの上で
小さくつぶやきました
部屋は静かで
時計の音だけがゆっくり流れています

「小雪、まだ起きてる?」
ドアの向こうから
小春のやわらかい声がしました
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「うん……ちょっとだけ」

「入ってもいい?」
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「うん」
小春はそっと部屋に入り
ベッドのそばに腰を下ろします
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「なんか、今日も何もできなくて」
小雪は天井を見たまま言いました
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「やろうとは思ってたんだけど……
気づいたら一日終わってて」
少しだけ間があいて
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「こういう日が続くとさ……
自分がダメになっていく気がする」
その言葉は
静かに部屋の中に落ちました
小春はすぐには答えず
少しだけ考えてから口を開きます

「“できなかった日”ってね」
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「うん……」
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「本当は、“何もしてない日”じゃないことが多いよ」
小雪はゆっくりと目を向けました

「今日、小雪は何してた?」
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「え……」
少し考えて
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「ぼーっとしてた時間が多かったかも」

「それってね」
小春はやさしく続けます
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「“止まってた時間”じゃなくて
“回復しようとしてた時間”かもしれないよ」
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「回復……?」

「うん。人って疲れてるとき
ちゃんと動けないようにできてるから」
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「無理に動こうとすると
もっと消耗しちゃうでしょ」
小雪は少しだけ考え込んで
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「……たしかに、何かやろうとしても
全然集中できなかった」
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「それ、ちゃんとサイン出てるよ」
小春は小さく笑います
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「“今日は休んだ方がいい日です”って」
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「でも……休んでばっかりだと
このまま何もできなくなりそうで怖い」
その気持ちに
小春はゆっくりとうなずきました

「うん、その不安もすごく分かる」
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「でもね」
少しだけ前に身を乗り出して

「“ずっと動けない人”って
実はほとんどいないんだよ」
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「え……そうなの?」
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「人って、ちゃんと回復したら
自然と動きたくなるから」
小雪は少しだけ目を丸くしました
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「動かなきゃ、じゃなくて……?」
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「うん。“動きたくなる”が戻ってくる」
部屋の空気が
少しだけやわらぎます

「だからね」
小春は続けます
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「今日できなかったことよりも
“ちゃんと休めたか”の方が大事な日もある」
小雪はゆっくりと息を吐きました
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「……じゃあ今日って」
少し迷ってから
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「ダメな日じゃなかったのかな」
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「うん」
小春は迷わず答えます
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「“整えてた日”だと思うよ」
その言葉を聞いて
小雪の肩が
ほんの少しだけゆるみました
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「……そっか」
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「明日も、いっぱいやらなくていいからね」

「ひとつだけでいい」
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「ひとつも無理なら
“起きただけでもOK”にしよ」
小雪は少し笑って
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「ハードル低いね」
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「低くていいんだよ」
小春も笑います
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「越えられる高さにしておくのがコツだから」
部屋の電気を少し落として
小春は立ち上がりました

「ちゃんと眠れそう?」
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「うん、さっきよりは」
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「それならよかった」
ドアの前で振り返って

「今日もちゃんと、おつかれさま」
その一言が
静かに、やさしく残りました
今日、がんばれなかったとしても
それは“止まっていた”わけではなくて
“整えていた”だけかもしれません
人はずっと同じペースでは進めないから
止まる日も、ゆるむ日も必要です
そしてその時間があるからこそ
また少しだけ、前に進める日が来ます
今日はもう
「できなかったこと」ではなく
「ここまで来たこと」を見てあげてください
それだけでも、十分です
またしんどくなったら
ここで少し休んでいってくださいね


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