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「はぁ……」
小雪はテーブルに肘をつきながら、小さくため息をついた。
時計を見ると、もう夜の九時を過ぎている。
仕事は終わった。
お風呂も入った。
明日の準備もした。
それなのに、心だけが落ち着かない。

「どうしたの?」
キッチンから小春が顔を出した。
フライパンからは、じゅうっと優しい音が聞こえている。
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「今日ね」
小雪は少しだけ視線を落とした。
-150x150.png)
「また変なこと言っちゃったかもしれない」
-150x150.png)
「あら」
小春は卵をくるりと巻きながら相槌を打つ。

「会議で?」
-150x150.png)
「うん」
-150x150.png)
「失言?」
-150x150.png)
「たぶんそこまでじゃないと思う」
-150x150.png)
「思う?」
-150x150.png)
「でも帰ってからずっと考えてる」
小春は少し笑った。
-150x150.png)
「小雪らしいね」
-150x150.png)
「全然うれしくない褒め言葉だよ」
小雪は頬を膨らませる。
頭の中では何度も同じ場面が再生されていた。
あの言い方はよくなかったかもしれない。
相手は嫌な気持ちになったかもしれない。
もっと別の言葉があったかもしれない。
考えれば考えるほど、気持ちは沈んでいく。
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「できました」
小春は皿に卵焼きを乗せてテーブルへ運んだ。
ふわふわの卵焼き。
少し甘い香りがする。

「食べよう」
-150x150.png)
「いただきます」
小雪は箸で一切れつまんだ。
優しい甘さが口の中に広がる。
少しだけ緊張がほどけた。

「ねえ、小雪」
-150x150.png)
「なに?」

「もし今日、私が同じことをしてたらどう思う?」
小雪は少し考える。
-150x150.png)
「うーん……」

「うん」
-150x150.png)
「そんなに気にしなくていいんじゃないかなって言うと思う」

「どうして?」
-150x150.png)
「だって悪気があったわけじゃないし」
-150x150.png)
「なるほど」
小春は頷いた。
-150x150.png)
「じゃあ小雪にも同じこと言ってあげたら?」
-150x150.png)
「うっ」
思わず言葉に詰まる。
小春はくすりと笑った。
-150x150.png)
「また自分だけ厳しくしてる」
-150x150.png)
「そうかも」

「そうかもじゃなくて、そうだよ」
二人で少し笑った。
しばらく静かな時間が流れる。
小雪は卵焼きをもう一切れ食べた。
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「でもさ」

「うん」
-150x150.png)
「反省するのは大事じゃない?」

「大事だよ」
小春はすぐに答えた。
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「でもね」
-150x150.png)
「うん」

「反省と自己否定は違うと思う」
小雪は首をかしげる。
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「どう違うの?」

「反省は次に活かすためのもの」
-150x150.png)
「うん」
-150x150.png)
「自己否定は自分を傷つけるためのもの」
その言葉に、小雪は少し黙った。
確かに今日は、
次にどうするかよりも、
自分がダメだったことばかり考えていた気がする。

「失敗したかもしれない」
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「うん」
-150x150.png)
「もっと良い言い方があったかもしれない」
-150x150.png)
「うん」

「そこまでは反省」
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「うん」
-150x150.png)
「でも『だから私はダメだ』になると自己否定」
小春はそう言った。
小雪はゆっくり頷く。
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「なるほどなぁ……」
窓の外を見ると、街の灯りが静かに揺れていた。
今日の出来事は変えられない。
でも、自分を責め続けるかどうかは選べるのかもしれない。
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「ねえ、小春」

「なに?」
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「私、たぶん今日もそんなに悪い人じゃなかったよね」

「うん」
-150x150.png)
「失敗したかもしれないけど」

「うん」
-150x150.png)
「それだけだよ」
小春は優しく笑った。
-150x150.png)
「それだけ」
小雪も少し笑う。
卵焼きを最後の一切れまで食べ終える。
心の中に残っていた重さが、少しだけ軽くなった気がした。
後悔はある。
反省もある。
でも、それは自分を嫌いになる理由ではない。
今日の自分に必要だったのは、
責めることではなく、
少し優しくしてあげることだったのかもしれない。
そんなことを思いながら、
小雪は空になったお皿を見つめていた。


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