小春がプリンを食べながら考えたこと

よりそいノート

「はぁ……」

夕方。

小雪はテーブルに頬杖をつきながら、小さくため息をつきました。

その目の前には、コンビニで買ってきたプリンがひとつ。

「どうしたの?」

お茶を淹れながら、小春が声をかけます。

「なんだか今日は、うまくいかなかった気がして……」

小雪はスプーンでプリンをつつきながら言いました。

「仕事も中途半端だったし、やろうと思ってたことも終わらなかったし……」

「うんうん」

小春は静かにうなずきます。

「もっと頑張れた気がするんです」

そう言う小雪の声は、少しだけ元気がありません。

小春は湯気の立つ湯のみを置くと、ふっと笑いました。

「じゃあ聞くけど、小雪は今日ご飯食べた?」

「食べました」

「お風呂は?」

「入る予定です」

「ちゃんと仕事にも行った?」

「行きました」

「じゃあ十分じゃないかな」

小春の言葉に、小雪は首をかしげます。

「でも、やり残したことがいっぱいあります」

「やり残したことより、やったことは見てあげないの?」

そう言われて、小雪は少し考え込みました。

確かに今日も朝起きたし、仕事にも行った。

買い物もしたし、洗濯もした。

でも気づけば、

できなかったことばかり数えていた気がします。

「私たちってね」

小春はお茶をひと口飲みました。

「頑張り屋さんほど、自分に厳しいんだよ」

「そうなんでしょうか」

「他の人には『十分頑張ってるよ』って言えるのに、自分には言えない人、多いからね」

小雪は少しだけ苦笑しました。

確かに友達が同じことを言ったら、

『十分頑張ってるじゃないですか』

と答える気がします。

でも自分のことになると、

なぜかもっと頑張らなきゃと思ってしまう。

「今日はね」

小春がプリンを指差しました。

「そのプリンを美味しく食べるのがお仕事」

「え?」

「頑張りすぎ禁止の日」

「そんな日があるんですか?」

「今作った」

思わず小雪は笑ってしまいました。

「なんですか、それ」

「でも、たまには必要だと思うよ」

小春は優しく言います。

「ずっと走り続けるのは疲れるから」

窓の外は少しずつ暗くなり始めています。

小春はプリンをひと口食べました。

甘くて、少しだけ心がほどける気がしました。

今日も完璧ではなかったかもしれない。

やり残したこともあるかもしれない。

でも、

今日という一日をちゃんと生きた。

それだけでも十分なのかもしれません。

「小春」

「ん?」

「プリン、美味しいです」

「それはよかった」

そう言って笑う小春を見て、

小雪も少しだけ笑いました。

頑張れなかった日じゃない。

今日は、

少し休んだ日。

そう思えた夜でした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました