失敗した日のプリン

よりそいノート

「はぁ……」

小雪はテーブルに頬を乗せたまま、小さくため息をついた。

目の前には、大好きなプリン。

楽しみにしていたはずなのに、今日はなんだか食べる気になれない。

「どうしたの?」

向かいに座っていた小春が聞いた。

「今日ね、失敗しちゃった」

「そっか」

小春はそれ以上何も言わず、お茶をひとくち飲んだ。

その優しさに、小雪は少しだけ話しやすくなる。

「頑張ろうと思ってたんだけどなぁ」

「うまくいかなかった?」

「うん」

小雪はプリンをひとくちすくう。

「なんかね、失敗すると自分がダメな気がする」

甘いはずのプリンが、今日は少しだけ味気なく感じた。

「ねえ、小雪」

「なに?」

「もし私が今日、小雪と同じ失敗してたらどう思う?」

小雪は首をかしげた。

「どうって……」

少し考えて答える。

「失敗くらいあるよねって思うかな」

「怒ったりする?」

「しないよ」

「なんで?」

「だって失敗しただけだもん」

そこまで言って、小雪ははっとした。

小春が少しだけ笑う。

「自分には厳しいのに、私には優しいね」

「うっ……」

「図星?」

「図星かも……」

二人で少し笑った。

窓の外はすっかり暗くなっている。

「失敗するとさ」

小雪はスプーンをくるくる回しながら言った。

「全部ダメだった気がするんだよね」

「でも本当に全部?」

「え?」

「今日、朝起きたでしょ?」

「起きた」

「ご飯も食べた」

「食べた」

「ちゃんと頑張ろうともした」

「……した」

「じゃあ全部じゃないよ」

小雪は思わず黙り込んだ。

失敗したことばかり見ていたけれど、言われてみれば確かにそうだ。

「真面目な人ほど、一つの失敗が大きく見えちゃうんだよね」

小春はそう言った。

「でも失敗した日って、失敗した日でしかないんだと思う」

「ダメな人になった日じゃなくて?」

「うん」

「失敗した日」

その言葉を聞いて、小雪は少し肩の力が抜けた気がした。

プリンをもうひとくち食べる。

さっきより、ちゃんと甘い。

「ねえ、小春」

「なに?」

「今日は失敗したけど、一日は終わったね」

「終わったね」

「私、生き残ったね」

「大げさだなぁ」

そう言いながら、小春は笑った。

小雪もつられて笑う。

失敗はした。

でも、それで終わりじゃない。

プリンを食べ終わるころには、そんな気持ちになっていた。

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