今日は、何も進まなかった午後

よりそいノート

午後の茶屋は、いつもより少し静かでした。
窓から入る光が、床の上に長い影を作っています。
小雪はテーブルにあごを乗せて、ぽつりと言いました。

「……今日、何も進まなかった」

小春は急須にお湯を注ぎながら、
「そうなんだ」と静かに答えました。

「やろうと思ってたこと、あったのに」

小雪は小さくため息をつきます。

「気づいたら、もうこんな時間で……」

小春は湯のみを二つ並べて、
その一つを小雪の前に置きました。

「はい、お茶」

湯気がふわりと上がります。
小雪は湯のみを見ながら言いました。

「何もしてないのに、疲れた気がする」

小春は少し考えてから言いました。

「何もしてない日って、
心の中ではいろいろ考えてる日だったりするよ」

「……そうかな」

「うん」

小春は静かにうなずきました。

「がんばる日もあれば、
がんばれない日もあるよ」

小雪は少しだけ顔を上げました。

「今日は、がんばれなかった日かな」

「たぶんね」

小春はお茶をひとくち飲んで言いました。

「でも、小雪はちゃんとここに来た」

「ここ?」

「うん。茶屋に」

小雪は湯のみを持ち上げて、
あたたかさを感じながら聞きました。

「……それだけでもいいの?」

小春はやさしく笑いました。

「それだけでも、いい日だよ」

茶屋の外では、
午後の光が少しずつやわらいでいきます。

小雪はお茶をひとくち飲みました。

「……ちょっと、元気出た」

小春はうれしそうに言いました。

「よかった」

そして茶屋には、
また静かなお茶の時間が流れていきました。

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