夜だった。
小雪はスマホの画面を見つめていた。
数時間前に送ったメッセージ。
既読はついている。
でも、返信はまだ来ていない。
小雪はスマホを置いた。
そして数分後、
また手に取った。
変わらない画面。
返信はない。
-150x150.png)
「うーん……」
小さくため息をつく。
本当は分かっている。
相手だって忙しい。
仕事かもしれない。
家事かもしれない。
ただスマホを見ていないだけかもしれない。
それなのに、
頭の中では別の声が聞こえてくる。
-150x150.png)
「変なこと言ったかな」
-150x150.png)
「気を悪くさせたかな」
-150x150.png)
「嫌われたのかな」
考え始めると止まらない。
返信が来ない理由を、
次から次へと想像してしまう。
その時だった。

「どうしたの?」
小春が部屋に入ってきた。
手には湯気の立つマグカップ。
ふわりと優しい香りが広がる。
-150x150.png)
「ハーブティー?」

「うん」
小春はマグカップを小雪の前に置いた。

「なんか難しい顔してるから」
小雪は苦笑いした。
-150x150.png)
「返信が来なくて」

「ああ」
小春はすぐに察したようだった。

「既読?」
-150x150.png)
「うん」

「なるほど」
小雪はスマホを見せた。
-150x150.png)
「数時間前なんだけど」

「うん」
-150x150.png)
「なんか不安になってきちゃって」
小春はゆっくり椅子に座る。
そして静かに聞いた。

「何が不安なの?」
-150x150.png)
「嫌われたのかなって」
-150x150.png)
「本当に?」
小春は首をかしげた。
-150x150.png)
「え?」

「嫌われた証拠はある?」
小雪は言葉に詰まった。
証拠。
そう言われると何もない。
返信が来ていない。
ただそれだけだ。
-150x150.png)
「でも……」

「うん」
-150x150.png)
「返信が来ないし」

「それは事実だね」
小春は頷く。
-150x150.png)
「でも『嫌われた』は想像だよ」
その言葉に、
小雪は少し黙った。
確かにそうだった。
返信がないのは事実。
でも、
嫌われたかどうかは分からない。
いつの間にか、
自分の不安が作った答えを、
本当のことみたいに思っていた。
小春はハーブティーをひと口飲んだ。
-150x150.png)
「人ってね」
-150x150.png)
「うん」

「不安になると、一番怖い理由を選びやすいんだって」
-150x150.png)
「そうなんだ」
-150x150.png)
「本当は他にもたくさん理由があるのにね」
仕事中かもしれない。
疲れて寝ているかもしれない。
返信を考えている途中かもしれない。
後で返そうと思っているのかもしれない。
でも、
不安な時ほど、
なぜか一番悪い想像を信じてしまう。
小雪はマグカップを手に取った。
温かさが指先に伝わる。
少しだけ肩の力が抜けた。
-150x150.png)
「私さ」

「うん」
-150x150.png)
「返信が来ないだけで、勝手に物語作ってたかも」
小春は笑った。
-150x150.png)
「あるあるだね」
-150x150.png)
「しかもだいたい悲しい方向に」
-150x150.png)
「それもあるある」
二人は少し笑った。
窓の外を見る。
夜の街は静かだった。
返信はまだ来ていない。
でも、
今すぐ答えを出さなくてもいい気がした。
相手の気持ちは、
相手にしか分からない。
だから、
自分の不安だけで結論を決めなくてもいい。
-150x150.png)
「ねえ、小春」

「なに?」
-150x150.png)
「今夜は待つだけにしてみる」
小春は優しく頷いた。
-150x150.png)
「それがいいと思う」
小雪はスマホを伏せた。
そしてハーブティーをひと口飲む。
爽やかな香りが心を落ち着かせてくれる。
返信がないことと、
嫌われたことは違う。
そんな当たり前のことを、
少しだけ思い出せた夜だった。
窓の外では、
静かな月が優しく光っていた。


コメント