休日の朝だった。
窓の外はよく晴れている。
せっかくの休みなのに、小雪はソファの上でスマホを眺めていた。
SNSには楽しそうな写真が並んでいる。
旅行に行った人。
カフェ巡りをしている人。
趣味を楽しんでいる人。
新しいことに挑戦している人。
みんな充実しているように見えた。
小雪は小さくため息をつく。
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「私って、何が好きなんだろう」
気づけばそんな言葉が口からこぼれていた。
特別な趣味もない。
夢中になれるものもない。
休日になると何をしていいのか分からなくなる。
そんな自分が少し嫌だった。
するとキッチンから小春が顔を出した。

「どうしたの?」
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「うーん……」
小雪はスマホを見せる。
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「みんな好きなことがあっていいなって」
小春は画面をちらりと見てから笑った。
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「また比べてるね」
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「だって本当だもん」
小雪は頬を膨らませる。
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「旅行が好きな人もいるし、趣味がある人もいるし」

「うん」
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「私は何が好きなのか全然分からない」
小春は少し考えるように窓の外を見た。
そして静かに言った。

「好きなことって、探すものじゃなくて気づくものかもしれないよ」
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「気づく?」

「うん」
小雪は首をかしげる。
小春は棚からティーポットを取り出した。
お湯を注ぐ。
ふわりと優しい香りが広がった。

「小雪はさ」
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「うん」

「昨日の夜、あのパン屋さんの話をしてたよね」
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「ああ、してた」

「新作のクリームパンが美味しかったって」
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「美味しかった」
-150x150.png)
「すごく嬉しそうだったよ」
小雪は少し笑った。
確かにそうだった。
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「あと、この前はうさぎの動画見てずっと笑ってた」
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「それは見てた」

「それも好きなんじゃない?」
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「そんなの好きなことって言えるのかな」
すると小春は少しだけ肩をすくめた。

「なんで?」
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「もっと立派なものじゃないと」

「誰が決めたの?」
その言葉に小雪は黙った。
確かにそうだった。
好きなことというと、
何か特別なものを想像していた。
人生を変えるような夢。
ずっと続けられる趣味。
人に誇れる特技。
そんなものを探していた。
でも、
本当にそうだろうか。
美味しいパンを食べる時間。
好きなお茶を飲む時間。
うさぎの動画を見て笑う時間。
それも十分に「好き」なのかもしれない。
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「私さ」
小雪がぽつりと言う。
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「好きなことを探そうとしすぎてたのかも」

「かもしれないね」
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「大きな答えばっかり探してた」
小春は静かに頷いた。

「好きなことって、最初は小さいことが多いからね」
部屋の中に穏やかな時間が流れる。
小雪は温かい紅茶をひと口飲んだ。
心が少しだけ落ち着く。
窓から入る風も気持ちいい。
その瞬間だった。
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「あ」

「どうしたの?」
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「今、この時間好きかも」
小雪は少し照れながら言った。
小春は優しく笑う。
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「それで十分だと思うよ」
好きなことは、
突然見つかるものではないのかもしれない。
毎日の中にある小さな「心地いい」。
小さな「楽しい」。
小さな「またやりたい」。
そういう感覚の積み重ねが、
いつか自分らしさになっていくのかもしれない。
小雪はもう一度紅茶を飲んだ。
未来のことはまだ分からない。
やりたいこともまだ見つかっていない。
でも、
今日好きだと思えた時間はあった。
それだけで十分な気がした。
窓の外では、
ゆっくりと雲が流れていた。


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